訪問看護の仕組み

介護・支援の必要な方は増加傾向に

訪問看護の仕組み

超高齢化社会を迎えた日本は、「2035年には3人にひとりが65歳以上の高齢者になる」と予測されています。高齢者の家族形態も大きく様変わりし、子ども世帯との同居率が1980年には69%だったのに対し、2015年には39%に減少しました。高齢者のひとり暮らし世帯は男性が13.3%、女性が21.1%となっています。

現在、平均寿命は男女ともに80歳を超えるようになりましたが、その一方で健康寿命は平均寿命ほど伸びず、2001年以降、健康寿命と平均寿命との差がわずかずつではありますが広がっています。要介護(要支援)認定者数は2000年には約218万人でしたが、2015年には約2.8倍となる608万人に増えました。

包括的に要介護者を支える仕組みづくりが重要に

包括的に要介護者を支える仕組みづくりが重要に

高齢になって病気や障害を持っていても、「病院ではなく、自宅などの住み慣れた生活環境で自分らしい生活を続けたい」と誰もが思っているはずです。入院医療や外来医療、介護・福祉サービスを相互に補完しながら、包括的に患者や要介護者を支える在宅医療・介護の仕組みづくり。それは誰もが持っているその思いを実現するために必要不可欠なものです。

在宅ケアは、ADL(日常生活動作)からQOL(生活の質)へと移行するものです。そのため、看護師や介護従事者が中心となり、地域と連携しながら在宅で療養行う方を支援していく仕組みが必要になります。また、在宅で最期を迎えるためには、在宅医師と訪問看護師などが24時間対応で医療処置を行う仕組みが必要です。

こうしたことから、現在、国は地域における医療・看護・介護が連携し、包括的かつ継続的な在宅医療・ケアの提供ができるよう「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。訪問看護制度は、介護が必要な高齢者や療養者が、家族や周囲の支援によって住み慣れた地域で療養できるよう、国が創設した制度です。そのため、訪問看護ステーションは、「地域包括ケアシステム」の中核的な役割を果たすよう、国から積極的な支援を受けています。

訪問看護を提供している機関

訪問看護を提供しているのは、以下の機関です。

訪問看護ステーション

看護師または保健師が管理者となり運営している事業所です。看護師や保健師のほか、准看護師、助産師などがいます。看護師の代わりに、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが訪問してリハビリテーションを行うこともあります。

保険医療機関(介護保険法のみなし指定訪問看護事務局)

病院や診療所などの保険医療機関が「訪問看護部門」を設置するなどして、訪問看護サービスを提供することがあります。この場合、保険医療機関は介護保険法の「みなし指定訪問事業所」となり、訪問看護ステーションと同じように介護保険と医療保険が使えるようになります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護(みなし指定訪問看護事業所)

介護保険制度の地域密着サービスのひとつです。定期的な巡回、または通報による随時対応が可能です。訪問に際しては、介護士だけでなく看護師とも連携し、両面からサポートできます。

看護小規模多機能型居宅介護(みなし指定訪問看護事業所)

介護保険制度のサービスのひとつです。デイサービスを中心とし、短期間の「宿泊サービス」や介護士が訪問する「訪問介護サービス」、さらに「訪問看護サービス」が追加されています。

民間企業の訪問看護サービス

医療保険制度や介護保険制度以外の訪問看護サービスを、民間の企業などが行うものです。公的保険は適用されませんが、訪問看護ステーションや病院からの訪問看護と同じように、看護サービスを受けることができます。
 
利用料金などは各企業で定められ、バラエティに富んだサービスメニューが用意されています。遠距離の外出支援や長時間の滞在、受診時の同行など、各種保険では対応できないサービスも可能です。

提供内容

一般的な訪問看護サービスは以下のような内容になります。

日常生活の健康管理

  • 病気や障害の状態、血圧・体温・脈拍のチェック
  • 服薬管理
  • 栄養バランスや食事摂取のケア
  • 排泄のケア
  • 清潔に関するケア
  • 寝たきりによる床ずれ予防
  • コミュニケーション支援 など

医師の指示による医療処置、医療機器の管理

  • 主治医の指示に基づいた点滴や注射などの医療処理
  • 人工呼吸器などの管理
  • 気管切開部などの管理
  • 尿管やカテーテルなどの管理
  • 人工肛門などの管理 など

リハビリテーション

  • 体位交換
  • 関節などの運動の訓練・指導
  • 日常生活動作の訓練・指導
  • 外出支援 など

その他

  • ターミナルケア
  • ご家族への支援・相談
  • 心のサポート など

保険外(自費)看護サービス

  • 受診の同行・付き添い
  • 買い物やレジャーの同行 など
  • 冠婚葬祭
  • 入院中の外出
  • 保険時間外を超えた訪問看護